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2023年01月25日

IPO(新規上場)時に効果をもたらすブランディングとその進め方

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企業がリブランディングを検討し始めるときには、様々なタイミングがあります。その中でも効果があると考えられているのが、企業が上場するタイミングでおこなうIR視点のブランディングです。今回は、その理由と具体的な進め方について整理します。

(2019.11.01 公開 2023.1.25 更新)

ブランディングが投資家の心をつかむ時代に

投資家が投資先を分析する際に参考とするIR情報には、財務情報(定量情報)と非財務情報(定性情報)があると言われています。

かつては、数字として明確に示されている株価や決算などの財務情報(定量情報)に注目が集まりがちでしたが、近年では、「企業が目指すビジョン」「事業の方針」「社会に対する責任」といった、直接数字としては現れない非財務情報(定性情報)に対する価値が高まっているようです。

このような背景から、しっかりしたブランドビジョンやブランドコンセプトを持ち、魅力的なデザインで企業としての取り組みを表現していくこと、つまりブランディングに力を入れて投資家の信頼を獲得しようとする動きが、企業のIR活動の考え方として一般的なものになりつつあります。

また、資産運用がインターネットなどを通じて手軽なものとなったことから、個人で好きな企業に投資をする個人投資家も珍しい存在ではなくなりました。このことからも昨今のIR活動には、プロではない一般の方にもわかりやすく、共感を得られるアプローチが求められているのです。

特に上場前のタイミングはブランディングに注力するチャンス

上場をするタイミングというのは、これまでお付き合いのあるお取引先、協力会社などのステークホルダーだけでなく、初めて自社を知る証券アナリストや機関投資家、個人投資家に向けてプレゼンテーションをし、認知度を拡大する絶好のチャンスです。

上場に合わせてブランディングを計画的・戦略的に行うことで、

「私たちが何者か」
「どんなビジョンをもち、どんな事業をしているか」
「将来どんな成長が期待できるのか」
といった内容を、効果的に投資家に伝えることが可能となります。

上場に合わせたブランディングの進め方事例

ここからは、上場のタイミングに合わせてブランディングを実施する場合の、基本的な進め方をご紹介します。

Step 1

まず、上場までのスケジュールをチーム内で共有し、開発・制作が必要な項目をしっかり洗い出します。

次に、関係者インタビューやワークショップを通して、ブランディングを始めるにあたって必要な情報を整理します。企業のこれまでの歴史をふまえ、今後どんなブランドを目指したいのかを、関係者でとことん話し合い、意見を出し合います。

・上場までの全体スケジュールをひきタスクを整理、企画を立案
・これまでの歴史、ブランドの強み/弱み等の整理
・関係者インタビュー/ワークショップ

Step 2

出し合った意見をもとに、ブランドコンセプトをしっかりと固め、ネーミング・ステートメント・ロゴマーク・ロゴタイプなど、ブランドを表現するための構成要素を、必要に応じてリニューアルします。

これらが整ったら、会社を運営するうえで必要となる、ステーショナリー・看板・グッズなど、様々なアプリケーションデザインを制作していきます。

・ブランドネーミング開発
・ブランドステートメント開発
・ブランドロゴマーク、ロゴタイプの開発
・ブランドデザインシステムの規定(ロゴ、ブランドカラー、フォントなどのルール設定)
・各種アプリケーションデザイン(名刺・封筒・ドキュメントフォーマット・ユニフォーム・建物サイン 等)

Step 3

あらゆるステークホルダーにブランドを正しく伝えるため、WEBサイトやパンフレットなどのコミュニケーションツールをつくります。

特にブランドムービーは、第三者にブランドをわかりやすく伝えることができることから、株主総会などイベントの場で放送したり、WEBサイトのトップとして使用したり、CM用に編集したりと、様々な場面で幅広い活用法があるため、制作することを積極的にお勧めしています。

上場に際してTVCMや新聞広告などを検討する場合は、発表タイミングにあった枠を確保する必要があるため、時期を逃さないように注意しましょう。

また、年次報告書や中間報告書といった株主向けのツールもデザインを合わせ、世界観を統一させることが重要です。

・ブランドコンセプトブックの制作
・コーポレートWEBサイトのリニューアル
・ブランドムービーの制作
・上場広告(新聞、交通広告、CM 等)の準備
・ステークホルダーに向けたブランド発表会の準備
・IR関連ツールのデザイン刷新

ゴールを見据えた計画的なブランディングを

上記の進め方はあくまで一例です。また、プロジェクトの期間については、スケジュールに余裕を持って長期的に検討する場合や、限られた短期間の中で決定していく場合など、お客様のご事情によって様々です。

特に成長著しい企業の場合、上場までの流れがスピーディーであり、ブランディングに十分な時間を取れないこともあるでしょう。しかし、上場のタイミングは多くの人に新しくブランドを知ってもらうためにも逃すことのできない機会であり、投資の価値が十分にあります。

愛し愛されるブランドを目指すためにも、上場を視野に入れ始めたら、計画的にスケジュールを立て、じっくりとブランディングを検討することをお勧めしています。

Case.NS TOOL

エフインクが手がけたブランディングプロジェクトの事例として、日進工具株式会社(NS TOOL)のプロジェクトをご紹介します。

NS TOOLは「超硬小径エンドミル」という工具の製造・販売でトップシェアを誇る企業です。

上場(当時の東証二部)に向けて、2016年にブランディングプロジェクトを開始しました。

日進工具の製品はBtoBの「工具」であり、エンドユーザーの皆様の目に直接触れるものではありませんが、日進工具の製品が加工する精密な部品や製品は、医療機器・自動車・家電・スマートフォン・カメラ・人工衛星など、あらゆる用途で使われており、社会を支えるなくてはならない存在といえます。

「日本のものづくりを支えている誇り」を、社員はもちろん、お客さまや投資家、就職活動中の学生など、あらゆるステークホルダーに改めて認識してもらい、ブランド価値を高めたいという思いでプロジェクトを推進。2017 年の9月に予定通り二部上場を果たし、同年中に一部に移行しました(現在はプライム市場)。

さらに、2018 年にはプロジェクト開始時の3倍以上にまで株価が大きく成長。上場に合わせてブランディングを上手に活用した事例と言えます。

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